あさひなぐ
年をとってから新しいことに挑戦するのは、なかなか勇気がいるものなのだよ。
勇気なんていう、だいそれたものではないかもしれない。
おっくうだという気持ちとの戦いだな。
戦いってのもまた大げさだな。
まあ、それなりの年になってみればわかるよ。
俺も若い頃は、年上のおっさんと接していて「ああ、このおっさんは自分の価値観に縛られちゃっているから、何を言っても無駄だな。」って思ったことが何度かあったもんな。そしてそんなおっさんみたいにはなりたくないって思ったもんだ。
でも、そうなりつつある。
そもそもハードボイルドだから、基本的に柔軟ではない。
「なんなの、ハードボイルドって?バカなの?」
バカにバカって言われる筋合いはないよ。
ハードボイルドっていうのは、いわば哲学だな。
「よけいわかんないよ。ってか、今バカって言った?」
お前がバカって言ったからバカって言ったんだ。
バカって言ったほうがバカなんだぞ。
「もういいよ。それで、この映画をなんで見ようと思ったの?
別に乃木坂46とか好きじゃないんでしょ?」
ん?まあな、ハードボイルドばっかり続けていてもな、ヤングなガールにもてないからな。クリント・イーストウッドもそう長くはないし、たまにはな、見聞を広める意味でもこういうのも見なくちゃなと思ってさ。
「へー、私がいるのに、まだヤングなガールにもてようとしてるのね。」
いや、それは例えばの話だよ、そんなヤングでグラマーでそれでいて足がすらっとしててすんげえ美人が現れても、俺はびくともしないぜ。なんたってハードボイルドだからな。俺にはお前だけだぜ。本当だぜ。
「ふーん、ねえ、じゃあ今度ディズニーランドに連れてってよ。」
ん?お?いーよ、行こうじゃないの。
そこってウーロンハイはあるの?
「知らないよ。そんなの」
き、喫煙所はあるの?
「バカじゃないの?そんなの無くったって一日くらい我慢しなさいよ!」
ああ、うん。そうだな。そうする。
「そういえば、座右の銘なんだっけ?」
ん?あー、えーっと、武士は食わねど高楊枝。
「ステキ。大好き。ねえ、今日、する?」
え、あ、はい。頑張ります。
合体した。