あさひなぐ

年をとってから新しいことに挑戦するのは、なかなか勇気がいるものなのだよ。

勇気なんていう、だいそれたものではないかもしれない。

おっくうだという気持ちとの戦いだな。

戦いってのもまた大げさだな。

まあ、それなりの年になってみればわかるよ。

俺も若い頃は、年上のおっさんと接していて「ああ、このおっさんは自分の価値観に縛られちゃっているから、何を言っても無駄だな。」って思ったことが何度かあったもんな。そしてそんなおっさんみたいにはなりたくないって思ったもんだ。

でも、そうなりつつある。

そもそもハードボイルドだから、基本的に柔軟ではない。

「なんなの、ハードボイルドって？バカなの？」

バカにバカって言われる筋合いはないよ。

ハードボイルドっていうのは、いわば哲学だな。

「よけいわかんないよ。ってか、今バカって言った？」

お前がバカって言ったからバカって言ったんだ。

バカって言ったほうがバカなんだぞ。

「もういいよ。それで、この映画をなんで見ようと思ったの？

　別に乃木坂４６とか好きじゃないんでしょ？」

ん？まあな、ハードボイルドばっかり続けていてもな、ヤングなガールにもてないからな。クリント・イーストウッドもそう長くはないし、たまにはな、見聞を広める意味でもこういうのも見なくちゃなと思ってさ。

「へー、私がいるのに、まだヤングなガールにもてようとしてるのね。」

いや、それは例えばの話だよ、そんなヤングでグラマーでそれでいて足がすらっとしててすんげえ美人が現れても、俺はびくともしないぜ。なんたってハードボイルドだからな。俺にはお前だけだぜ。本当だぜ。

「ふーん、ねえ、じゃあ今度ディズニーランドに連れてってよ。」

ん？お？いーよ、行こうじゃないの。

そこってウーロンハイはあるの？

「知らないよ。そんなの」

き、喫煙所はあるの？

「バカじゃないの？そんなの無くったって一日くらい我慢しなさいよ！」

ああ、うん。そうだな。そうする。

「そういえば、座右の銘なんだっけ？」

ん？あー、えーっと、武士は食わねど高楊枝。

「ステキ。大好き。ねえ、今日、する？」

え、あ、はい。頑張ります。

合体した。

BABY DRIVER

先日、「BABY DRIVER」を観に行ってきた。

そりゃーまー面白かった。

映画はアメリカにはかなわないよ。

何がかなわないって、ドライブインにあんなにかわいいパツキンのウエイトレスがいて、意外とかんたんに仲良くなれてしまうんだぜ？

日本ではありえないよ。

いや、そんなことはないか。国は関係ないか。個人の資質の問題か。　　　　　　　　

ファミレスでウエイトレスに声をかけて仲良くなってしまう。

高校生のときにそんなことあったな。

バーで隣り合わせた女性客とランデブー。

それもやったよ、そういえば。

旅先で恋に落ちたことも、１度か２度。

ありえるんだな、日本でも。

ただ、ここ数年、そんなことが起こる気配もない。というか気持ちがない。　　　　　

冒険心みたいなものにフタをしているんだな。

まだ老け込む年でもないのにな。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

やっぱりアメリカに行くか。環境を変えるというのもひとつの手段だ。

まずはドライブインでコーヒーを飲もう。

パツキンのウエイトレスが声をかけてくる。

ちょっと待て、そういえば英語は苦手だった。

パツキンも特に好きではない。

胃腸も弱いから、アメリカの食生活になじめないかもしれない。

大統領も気に入らない。

それは、日本もだった。

じゃあ、近場で済ますか。

部屋でパソコンになんか向かっていないで、街に出よう。

多分、なにかある。

今日はなくても、そのうちある。

あるといいね。